夢の中の見知らぬ男の正体
「昨日、夢の中で見たこともない恐ろしい顔の男に会って――」という話しを、友人や家族から聞いた事はないでしょうか?
夢は脳が創り出すものです。見たこともない人物を勝手に記憶するはずがありません。夢の中の登場人物や風景は、脳の中にある記憶を再構築する過程で想起されたものです。それでも、知らない人物に遭遇するのはなぜでしょうか。
実は、本人が「見たことも無い」と思っていても、それは意識されていないか忘れてしまっているだけで、過去にすれ違ったり実際に会っているか、あるいは写真や映像などで見ているものなのです。
脳は「自分」が意識しているものだけを記憶しているわけではありません。あらゆる五感から受けた刺激を短期記憶に溜め込んで、それを思い出したり後に活かせるように長期記憶に保管しなおすのです。
その過程で生まれるのが、見知らぬ男の正体です。
例えば、子供の時に大人から怒られた怖い記憶と、海外ドラマに出てきた犯人の顔が合成されて、自身の思う怖い夢の象徴として登場するのです。
夢の中で空を飛べたり魔法が使えるのも、これが理由です。できたらいいな、と思う動機が、今までに観た映像や体験と組み合わさって作り出されるのです。だって、実際に空を飛んだり魔法を撃った経験のある人、いないでしょう?
空を飛ぶ浮遊感はジェットコースターに乗った時の記憶かもしれません。魔法を撃た時の感覚は、お湯の温度や野球でボールを打ち返した時の反動が元になっているかもしれません。
つまり、正体不明の男にも「元ネタ」があるのです。それを紐解いて探してみるのも面白いのではないでしょうか。