戦国時代の武士の心がけとは

戦場は緊張の連続です。昼夜の別なく、いつ敵が来襲するかわかりません。

まさに一寸先は闇の世界。ですから、武士はつねに臨戦態勢をとっていました。油断大敵というわけです。したがって、食事は早食いが保身のために必要でした。とくに、朝食は早くすませること。一刻も早く出陣の準備をするためと、敵の不意討ちに備えるためです。

また、食事中に敵が襲ってきた場合には、ただちに箸を槍や鉄砲に持ちかえなければならず、食事どころの騒ぎではなくなります。そんなときのために、予備として5合の干し飯や干しみその食糧を腰に下げていました。

そして、武士は満腹になるほど食べませんでした。理由は、満腹状態で走り出すと息切れしますし、頭の回転、動作もにぶくなるからです。また、満腹で腰に鉄砲玉を受けると、討ち死にする例が多かったといいます。

さらに、満腹で出陣した場合には、かえって空腹感が早まり、疲れやすくなるそうです。これらの話は、じつは戦国武士が数々の戦いの中から得た、生き残りの知恵でした。

敵陣を目前に食事をとる場合には、情勢を見定め、武士の3分の1を警戒に出し、残りの者は立ち食いですませたといいます。サラリーマン戦国時代でいえば、駅前の立ち食いそばや牛丼をかき込んで、会社や得意先に出陣する社員のような格好です。

「腹が減っては戦ができぬ」ということわざがありますが、食べたものは必ず出ます。

では、便意をもよおした場合、どうしたのでしょうか。

たいがいは野糞でした。小川があれば、そこで垂れ流していたはずです。紙などはもちろんありません。草でふき、終われば土をかけておく。うっかりすると、他人のモノを踏んでしまう運の悪い人もいたかもしれません。

いずれにせよ、食事や排泄といったスキだらけの行為は、できるだけ早く済ませるしかありませんでした。

つまり「早食い、早グソ、早走り」が戦場での「心がけ」だったのです。