生まれたばかりの赤ちゃんが笑う

生まれたばかりの赤ちゃんが、うとうと眠りながら口の端をニッと上げてほほえむことがあります。

それを、たまたま見つけた母親は「楽しい夢でも見ているのね」と、お産のつらさも一時忘れて、ほのぼのした気持ちになることでしょう。

しかし、昨日や一昨日生まれたような赤ちゃんが、夢など見るのでしょうか。

起きているときでも、1人静かにほほえんでいることがあり、まるで思い出し笑いでもしているようです。

赤ちゃんは、生後1ヶ月くらいたつと、母親の笑いかけなど外部からの刺激によって、よく笑うようになりますが、それ以前の自然なほほえみは、医学的には自発的微笑とか、内因性または反射性の微笑とか、対象なき笑いとかいって、それ以後の笑いと区別されています。

生まれたばかりでなぜ笑うかは、実はよく分かっていません。

無力な赤ちゃんが、大人の可愛いと思う感情を誘発し、保護してもらうために、あらかじめこのほほえみがプログラムされているという説もあります。

ところで、古くから日本では、この最初の笑いが注目されていたらしく、「神笑い」「仏笑い」「虫笑い」、または「天神さまがくすぐっている」など、色々な言葉で表現されました。

「虫笑い」は「おなかのなかで虫が騒ぐので、くすぐったいから」と説明されています。

「カンの虫」「虫が好かない」「虫の居どころが悪い」「虫が知らせる」など、はっきり説明のつかないことを腹のなかにいるらしい「虫」のせいにする例は、枚挙にいとまがないほどです。

生まれたての赤ちゃんがなぜ笑うのか。昔の人も不思議に思い、そこに神秘的なものを感じていたということでしょう。