江戸っ子とそばつゆ

昔江戸っ子は死ぬ前に「せめて、死ぬ前にそばをどっぷりつけてくいてぇもんだ」と物の例えで言ったそうです。

ざるそばを食べるときに、江戸っ子は見栄を張ってそばちょこのつゆにほんの少ししかそばを入れないと言われています。

ですが、本当は別に見栄を張っているわけでもなんでもなく、周りから見るとそういう風に見えただけ、とのことです。

というのも、本当の東京のそばつゆは相当の濃さになっています。あの濃いつゆへ、そばの先だけをつけてすすり込めば、そばの香りも、つゆの味もうまく溶け合うというわけなのです。

逆に言えば、あの濃いつゆにどっぷりと入れてしまっては辛すぎて、食べられたものではないのです。(死ぬ前しか食べられないぐらい濃いと表現されたとか)

ちなみに、そばが「麺」として食べられるようになった17世紀半ば頃は、そば専門の店というのは当初まだなく、寛永から元禄のころまではそばとうどんは菓子屋の副業としてつくられていたようです。