形見分けの由来
日本では親が亡くなると、子供や縁者が集まって形見分けをします。通常、形見分けは忌明けの四十九日に行うようです。
この風習は日本特有のもので、外国ではあまり見かけません。
例えば、古来より形見分けの品として代表的なものに着物があります。平安時代に書かれた『栄華物語』にも「あはれなる御形見の衣は」との記述があり、これは亡くなった人の衣類について語っています。
形見分けは、単なる遺品整理よりも故人の霊魂を受け継ぐという意味合いが強く、特に衣類は最も身近な品物なので形見分けの対象となりやすいのです。
現代では腕時計や万年筆などの方が想像しやすいでしょうが、昔は着物も貴重品であり財産の一種だったのです。特に袖(そで)の部分が重要視されたことから、「袖分け」という言葉が生まれたほどです。
いずれにせよ、物に魂が宿るという思想は東洋的なもので、西洋のキリスト教的な思想などでは、人は死後、肉体から魂が離れて生前の行いをもとに、天国や地獄へ行くと思われています。なので、物は「モノ」として実用的ならば残す、不要ならば売ったり処分するという考えの方が一般的です。
アメリカでは、遺品整理の後に残った物を「エステートセール」で売ることがあります。エステートセールは自宅のガレージで即売会のように行われる場合もあれば、遺品整理業者に委託して処分する場合もあります。
どうしても日本人だと、故人の遺品を売り物にする気にはなれない、見知らぬ人の遺品はなんとなく使いにくい、という意見が多いので、縁のある人に引き取ってもらうか、内々で処分することの方が多いのです。
このように形見分けというのは、遺品整理という客観的な行いよりも、魂を受け継ぐといった東洋的な気持ちの部分が大きい、そんな伝統のある文化なのです。