ポパイとホウレンソウの関係
ポパイといえば、アメリカンコミックのキャラクターの中でもひときわ異彩を放つ人気者で、未だに知名度があります。
ホウレンソウの缶詰を取り出して食べると筋肉もりもりの男に変身するという独特の設定が印象的です。
それにしても、なぜ「ホウレンソウ」なのでしょうか? ステーキなどのお肉の方がホウレンソウよりも強くなれそうなイメージですが……
実は、ポパイが初めて登場したのは1929年「シンブル・シアター(Thimble Theatre)」という漫画で、ごくマイナーな脇役に過ぎませんでした。
何をやっても死なない不死身の設定など、脇役にありがちな極端な個性がウケて、たちまち彼は人気者になりました。
ポパイの超人的な能力は当初、別の要因で発現したことになっています。ホウレンソウの缶詰は後付けで、現代人が持つイメージはアニメ化されてからのものです。
ポパイ初のアニメーション作品は、1933年にフライシャー・スタジオが制作しました。兄のマックス・フライシャーがプロデューサー、弟のデイブ・フライシャーが監督を務めました。
彼らは、のちに大量のポパイアニメを作りますが、作品の小道具として積極的にホウレンソウの缶詰を使っていきます。
ポパイに強さを与えるためにホウレンソウを選んだ理由は定かではありません。一説によると、ホウレンソウに含まれる鉄分の含有量が多かったため、それを食せば強靭が体になるから、と考えたからだそうです。
しかしフライシャーの認識には誤りがあり、当時の科学者の文献にあった数値の10倍を見積もっていたとか。
いずれにせよ、ポパイがホウレンソウの缶詰を食べると強くなるという設定は、原作者であるE.C.シーガーも漫画版で使い、その相互作用によって確固たる個性となったのです。
ポパイの肖像は早い段階で様々な食品や製品の宣伝に使われ、今で言うメディアミックスの先駆けとして、大々的に展開されました。
その後、原作者が亡くなったあともポパイというキャラクターはあらゆる場面で作品化、商品化されていきます。ポパイが人気者になってからホウレンソウの売り上げが33%増加したという統計記録もあります。
ポパイというキャラクターは米国のベジタリアン連合が「宣伝キャラ」として作った、という逸話がありますが、海外の情報を探しても証拠を見つけることはできません。
それは、戦前から続く長いポパイの歴史が生んだ、一種の都市伝説なのかもしれません。