乙な味の「オツ」って何?

ひと味違ったものを評して「乙な味だ」とか、「なかなか乙である」と表現することがあります。

この「オツ」という言葉、どこから来たのでしょうか。

人間の声は、およそ2オクターブくらいの音域を持っていますが、高い方を「甲」の調子といい、低い方を「乙」の調子といいます。

江戸時代、三味線に合わせて歌う時に子供などが、伴奏よりも1オクターブ高い声で歌うのを「甲で歌う」、それに対して老人などが1オクターブ低い声で歌うのを「乙で歌う」といいました。

つまり、ルーツは声の低い調子のこと。乙の調子だったのです。

芸歴が長い年輩の俳優などの渋い声を聞いて「非常に味がある」と感じたりしますよね。この絶妙な味わいや深みのあるものを指して、「乙な味だ」というようになったのです。