リゾートバイト(後日談)
夏が終わってからの俺たちは、代わり映えのない生活に戻った。
「もう二度とあの場所へは行かない」
それが3人で集まった時の口癖だ。
ひと夏の恋どころかトラウマを抱えるだけで終わった。
ちなみにBは、蜘蛛を見ると怖がるようになった。
俺は社会人になってからも、時々あの出来事を思い出す。
喉元過ぎれば熱さを忘れると言うが、ようやく冷静に語れるようになった気がする。
そういえば、後に合流するはずだった2人の友人に事のあらましを説明したことがあった。
全て聞いた2人は、まるで怪談話を半信半疑で聞いているような顔をしていた。
後日その2人に会うと、なんと興味半分で旅館に電話をかけたらしい。最低だと思った。
ただし、電話に出たのは普通のおばさんの声だったというのだ。
そしてその2人は、あろうことか俺たち3人に女将さんの声かどうか確認しろ、と言った。
そんなこと出来るはずがない。女将さんが無事でも無事じゃなくても、俺にはそれを知る勇気はない。