原子力発電関連の業界用語まとめ一覧

原子力発電に関する世界で使われている業界用語・専門用語の一部を紹介します。時代とともに変化していったものや、現在では使われなくなってしまった言葉も含まれますが、一種の雑学としてお楽しみください。

あ〜お行

アルファ線
アルファ線とは、アルファ粒子の流れのこと。不安定核のアルファ崩壊によって放出される。他の放射線に比べエネルギーと粒が大きいため、アルファ線は近くのものに与えるエネルギーは大きい。しかし、透過力が弱く紙1枚程度で遮断できるため、外部被曝(体外被曝)ではほとんど人体に影響を与えない。
ウラン
地球上に天然で存在する最大の原子番号(92)を持つ。ウランには天然に3種類(U234 U235 U238)の同位体が存在し、いずれも長い半減期(数億年~数十億年)を持つ。天王星(ウラヌス)にちなんで命名された。
オフサイトセンター
重大な原子力災害が起きた時に、国や地元自治体、電力会社などの関係者による対策本部が置かれる施設で、正式名称は緊急事態応急対策拠点施設。

か〜こ行

ガイガー・カウンター
放射線量測定器のこと。放射線量を測定する機器は、一般的に「サーベイメーター」と呼ばれる。ガイガーカウンターはその中の1種類にあたり、「ガイガーミュラー(GM)管」と呼ばれる部品を使う。GM管は円筒形の容器の中に不活性ガスを封入したもので、放射線がこの容器内を通ったときに発生するパルスを数える仕組み。
cpm(カウンツ・パー・ミニット)
1分当たりの放射線測定値。ガイガーカウンターを使って測定する。放射線が計測器を通過するごとに1ずつカウントされ、放射性物質が付着しているかどうかを判定することができる。放射性物質による汚染の程度を簡易に調べるのに使われる。
核分裂(かくぶんれつ)
原子の中心には原子核があり、原子核は陽子と中性子とで構成されている。核分裂とは、ウラン、トリウム、プルトニウムなどの重い原子の原子核に、高速で中性子をぶつけることによって、原子を二つに分けること。核分裂の際に膨大なエネルギー、放射線や中性子が発生する。核分裂しやすい物質は、放出された中性子によって更に核分裂が連続して起こる(連鎖反応)。
ガンマ線
原子核が崩壊した際、安定に向かうために放出されるエネルギーがガンマ線。アルファ線やベータ線と異なり電荷を持たない。ガンマ線は透過力が強く、外部被曝でも体の奥深くまで到達する。遮断するには、50cm以上のコンクリート、10cm以上の鉛などが必要になる。
局所被曝(きょくしょひばく)
放射性物質をじかに手で触ったり、汚染された床を歩いたりして、人体の一部が集中的に被曝すること。
グレイ(Gy)
「グレイ」という単位は、放射線を照射された物質が吸収する質量(kg)あたりのエネルギー(J:ジュール)を表し、1kgあたり1ジュールの吸収線量を1グレイと定義する。
軽水炉(けいすいろ)
軽水炉は、商用発電用原子炉の主流である原子炉。軽水(普通の水)が減速材と冷却材に兼用されているのが特徴で、燃料には濃縮ウランを用いる。
原子力安全委員会
「原子力の平和利用」と「安全の確保」を目的とする機関。
原子力安全・保安院
原子力安全利用その他について監督する資源エネルギー庁の特別の機関。
原子力委員会
原子力の平和利用を取りまとめ、積極的に推進していくための機関。原子力の研究、開発及び利用に関する政策や関係行政機関の原子力の研究、開発及び利用に関する事務の調整等の企画し、審議し、決定する。
原子力緊急事態宣言
原子力災害対策特別措置法に基づき、原発で大事故に進展する恐れがある場合などに、首相が出す宣言。
原子炉圧力容器(げんしろあつりょくようき)
原子炉の炉心を収めた状態で内部の圧力を保持する容器のこと。
原子力ルネサンス
近年の欧州や米国で原子力発電の見直しと建設計画の動きを指す。
国際単位(SI単位)
国際単位系では7つの基本単位が定められている。これをSI基本単位と言う。基本単位は、時間(s)、長さ(m)、質量(kg)、電流(A)、熱力学温度(K)、物質量(mol)、光度(cd) 。

さ〜そ行

再臨界(さいりんかい)
再臨界とは、核分裂が止まっている核燃料が、何らかの条件によって再び臨海状態となること。軽水炉において、数位の低下により燃料棒の露出が続くと、ウラン燃料が溶け出して圧力容器の下部に蓄積する。溶け出した核燃料が集中して臨界量に達すると、核分裂連鎖反応が再び起こり「再臨界」となる。
シーベルト(Sv)
シーベルトとは「ある期間に被曝した量の合計」を表す単位であり、1時間その場所で過ごした人が1シーベルト「被曝」することになるという状態を「1シーベルト毎時(Sv/h)」と表す。1シーベルト(Sv)は1000ミリシーベルト(mSv)であり、100万マイクロシーベルト(μSv)である。
資源エネルギー庁
経済産業省の外郭機関で、原子力平和利用(原発)を推進していく機関。
全身被曝(ぜんしんひばく)
放射性物質と距離があり体全体が均一に被曝することを全身被曝と言う。

た〜と行

中性子線
中性子線は電荷を持たない中性子の粒子線のこと。原子に吸収されると別の種類の原子を作る性質がある。透過力が大きく、水やコンクリートに含まれる水素原子によって初めて遮断できる。

な〜の行

燃料棒(ねんりょうぼう)
棒状の燃料棒は炉心内での核燃料の標準的な形状であり、複数本の燃料棒が束ねられ燃料集合体と呼ばれるユニットが組まれている。

は〜ほ行

半減期(はんげんき)
放射性物質が放出する放射線の強さが、半分に減少するのに要する時間。放射性物質の放射線の強さは時間とともに次第に減少していく。これは、放射線を出す原子核の数が時間とともに減少し、また放射線の強さが単位時間当りの崩壊原子核数に比例するため。
被曝(被ばく、ひばく)
人体が放射線にさらされること。被曝したときの放射線の量は線量当量で表す。線量当量の単位はシーベルト。
フェイルセーフ
装置・システムにおいて、誤操作・誤動作による障害が発生した場合、常に安全側に制御すること。
またはそうなるような設計手法で信頼性設計のひとつ。装置やシステムは必ず故障する、あるいはユーザは必ず誤操作をするということを前提にしたもの。
プルサーマル
プルサーマルとは、プルトニウムとサーマルリアクターからできた和製英語。プルトニウムとウランを混ぜたMOX燃料を通常の原子力発電所(軽水炉=サーマルリアクター)で利用することをプルサーマルと言う。
プルトニウム
ウラン鉱石中にわずかに含まれている元素。遊星プルート(冥王星)にちなんで命名された。放射性元素でもあり、プルトニウム239、241その他いくつかの同位体が存在している。金属プルトニウムは、ニッケルに似た銀白色の光沢を持つ大変重い金属。
ベータ線
ベータ線とは、ベータ粒子の流れのこと。原子核がベータ崩壊を起こす際に放出される電子や陽電子のことをベータ粒子という。ベータ線は空気中を透過するが、薄いアルミニウム板などで防ぐことができる。
ベクレル(Bq)
放射能の壊変強度を表す SI 単位。一ベクレルは、放射性核種が一秒間に一つの割合で崩壊する放射能。
放射性物質(ほうしゃせいぶしつ)
放射能を持つ物質の総称で、ウラン、プルトニウム、トリウムのような核燃料物質、放射性元素もしくは放射性同位体、中性子を吸収又は核反応を起こして生成された放射化物質を指す。
放射性廃棄物(ほうしゃせいはいきぶつ)
原子力エネルギーの開発に伴い、核燃料サイクルのあらゆる部分から発生するさまざまな放射性の不要物を指す。放射性廃棄物は、その含有する放射性核種の特性に注目して、高レベル放射性廃棄物と、広義の低レベル放射性廃棄物とに大きく分類することができる。
放射線(ほうしゃせん)
放射線は、放射性物質から放出される光の一種。主な放射線の種類には、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、中性子線がある。
放射能(ほうしゃのう)
放射性物質が放射線を放出する能力を「放射能」と言う。不安定な原子核は、安定した状態になるために放射線を放出する。

ま〜も行

MOX燃料(モックスねんりょう)
混合酸化物燃料の略称であり、原子炉の使用済み核燃料中に1%程度含まれるプルトニウムを再処理により取り出し、二酸化プルトニウムと二酸化ウランとを混ぜてプルトニウム濃度を4~9%に高めたもの。
メルトダウン
炉心溶融を英語でメルトダウン(Nuclear meltdown)と言う。メルト(melt)は溶ける、ダウン(down)は落ちるという意味。

ら〜ろ行

ラジオアイソトープ
放射性同位体のこと。構造が不安定なため時間とともに放射性崩壊していく核種(原子核)。ラジオアイソトープ(radioisotope)や放射性核種(radionuclide)、放射性同位元素とも呼ばれる。
臨界(りんかい)
原子炉で、原子核分裂の連鎖反応が一定の割合で継続している状態のこと。
冷却材(れいきゃくざい)
核分裂によって放出される熱を、原子炉から取り出す役割を果たす流体のこと。
連鎖反応(れんさはんのう)
連鎖反応を起こすためには、分裂した核から生じた中性子が直ぐに次の核にぶつかるように高密度である必要がある。連鎖反応が起こり続けることを臨界といい、臨界が起こる量のことを臨界量と言う。
炉心(ろしん)
核分裂連鎖反応を起こし熱を発生させる原子炉の心臓部にあたる部分。炉心で発生した熱は燃料棒の間を流れる冷却水により外部に運び出され、タービンを回して発電する。
炉心溶融(ろしんようゆう)
炉心溶融とは、原子炉内の核燃料体が冷却能力の喪失によって過熱し、高熱で融解すること。