霊媒師

ある番組ディレクターAの話。

まずは簡単なインタビューの撮影から始まりました。

母親、息子、娘の三人家族だったそうです。

母親と子供たちは、彼らの計画通りに涙を浮かべて父親の話をしてくれました。

いい絵が撮れそうだ、とAさんは喜んだそうです。

 

そして霊媒師が登場!

 

霊視が始まりました。

父親が着ていた服から霊視をする段取りでした。

服を握り締める霊媒師。

 

 

長い沈黙。

 

 

更に沈黙。

 

 

そして沈黙。

 

 

まだ沈黙。

 

 

困ったな。

 

 

いつも通りなら図々しいぐらいに喋りまくると聞く霊媒師が、この時なぜか期待に反して霊視についてのコメントがしどろもどろ。

コメントを引き出そうとするAさんの努力のかいもなく、霊視の良いコメントは撮れませんでした。

スタッフは困惑しました。

これでは番組が作れない。

Aさんは必至に打開策を考えました。

 

裏山と池の撮影素材だけじゃどうしようもねぇぞ! やばいな。やばいぞ! 仕切直しか!

 

帰りのマイクロバス内のスタッフ達は無言でした。

Aさん一人が、エキサイトしながら電話で誰かと話していました。

そんなAさんに、霊媒師がゆっくりと近ずいて来ました。

Aさんが携帯電話を切ると同時に、霊媒師は呟きました。

 

 

「惨殺されてるよ」

 

 

「え?」

 

 

「惨殺されてるよ、あの家族に」

 

 

「家族に!?」

 

 

「殺人者の前では、わしゃ、言えんよ。裏山の土管みたいなもんがあるところに埋められているな」

 

 

暗闇から見つめる視線

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