中古車

ある時、友人から買ったばかりの車を手放したいという話を聞いた。

その車は当時かなりの人気車種で、中古でもそれなりの値段がつくはずだったが、彼はたまたま安く売られているのを発見し、即決で買い予約を入れた。

車に詳しい知人に聞くと、事故車かもしれないと言われたため、彼は修復歴や現状のコンディションをディーラーに事細かに聞いた。

その結果、バンパーの補修と電球類の交換以外、特に目立った項目は見当たらなかった。

修復歴ありの車であることを承知した上で、彼はその車を購入した。

 

そして納車から数週間後。

 

夜、彼が一人で車を走らせていると、目の前に子供が飛び出してきた。

 

「あぶない!!」

 

彼はとっさにハンドルを切って急停車した。一見すると、何事もなかったようだ。

念のため車を降りて車体周辺を確認するが、子供の姿は見当たらなかった。

その後も、彼はハンドルを握る度に何度も子供の飛び出し場面に遭遇するようになった。

そこで彼はある事に気づいた。

 

 

 

毎回、同じ子供……

 

 

 

白い服を着た小学生くらいの女の子だった。

彼はあちこちの中古車屋を訪ねて車を売ろうと試みるが、店側の都合が悪かったり、気の合わない店主にぶつかったりして、売却交渉はまとまらなかった。

おそらく周辺の業者の間では「ワケアリ」で知られた車だったのだろう。彼は安さと引き換えにババを掴まされたわけだ。

結局、彼は車を手放す機会を逃し続けた。

 

やがて彼は、本当に子供を轢いてしまうこととなる。

幸いにも子供は軽い怪我で済んだが、相手は彼の姉の娘だった。

その一件で、彼は車を解体屋へ持ち込む決意をするが、行く途中でエンジンが止まってしまい、どうにも動かせなくなる。

レッカーを手配し、ようやく解体屋まで運び込むことができて、彼はやっと開放された気分になった。

しかし、解体屋が持ち込まれた車をただスクラップにするわけがない。

廃車にするほど大きな事故ではなかったため、使える部品はいくらでもあった。

解体屋は、その車をバラバラに分解すると、使える部品を色々な業者に転売した。

飛び出してきた女の子の想いも、またどこかの車で生き続けるのだろうか。

俺はただ商売をしただけだ。責任を問われる筋合いはない。

 

 

暗闇から見つめる視線

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