冷たい右手

ある冬の深夜に、目的地もなく彼女とドライブしていた時の話。

その時は、国道を西に向かって走っていた。

そこには小さな橋が掛かっている場所があって、渡ってみる事にした。

橋を渡り終わったところで、左手を見ると小さな公園が見えた。

公園の外灯がぼうっと公園内を照らしていて、遊具が薄暗い光で浮かび上がっていた。

 

「ねえ、あれ見て!」

 

彼女が公園の方を指さして言った。

速度を少し落とし公園の奥を見ると、赤いスカートの女の子が一人でブランコに乗って遊んでいた。

 

「こんな時間にどうしたのかな?」

 

気になったので車を止め、あたりを見回してみるが、誰もいなかった。

 

「寒いのにね」

 

何となく車を降りて公園を見に行くと、さっきまで女の子が使っていたはずのブランコには誰も乗っていなかった。

ただ、ブランコは前後に乱れなく揺れていて、確実にさっきまで女の子がいた事を物語っていた。

何となく怖くなって「ヤベーよ。行こう」と彼女の冷えた右手を引っ張るようにして車まで走った。

手を離し、車に回り込むようにぐるっと回って助手席側を見た時、公園の方から彼女がふてくされた顔で歩いてきた。

 

 

「ひどーい! 一人で逃げるなんて!」

 

 

「え?」

 

 

あの右手は誰のものだったのだろうか……。

 

 

暗闇から見つめる視線

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