少年は生きている

友人が大学に通っていた頃に、グループで泊まりがけで遊びに行ったことがある。

その時、仲間の一人がビデオカメラを持っていて、ふざけて色々なものを写した。

その中のテープの一つに変な物が写っているという話を聞いた。

場所はどこかのトンネルで、時間は夜中の十二時くらいだった。

辺りは真っ暗で、かろうじて街灯の明かりで照らされている。

トンネルの中から、ふざけて手を振りながら歩いてくる仲間の女の子が見えた。

その右手の奥の方に小学生くらいの男の子が立っていた。

手前の女の子は薄闇の中に溶け込むように映っているのに、その男の子はやけにはっきりと映っていて、半ズボンを履いて後ろ向きに立っている事も分かった。

周囲には民家はなく、夜遅くに一人で子供がいるのはおかしい、と思った。

しかも、女の子はこちらへ向かって歩いてくるのに、その男の子は後ろを向いたままぴくりとも動かない。

幽霊のビデオが撮れたということで仲間内で大騒ぎになった。

噂を耳にしてビデオを観たいという人が続出する始末だった。

その友人は、得意げに皆にビデオを貸したそうだ。

そして、ビデオを観た人から感想を聞く事になった。

 

「これって怖いよな。横顔が見えそうで見えないところが特に」

 

おかしい。

男の子は後ろ向きに立っているので、横顔が見えるはずはない。

次に貸りた奴が言う。

 

「振り返ろうと、こっちを見ている右目が怖い」

 

手元に戻ってきたビデオを、改めてメンバーで確かめることにした。

トンネルの中から女の子が歩いてくる。いちど観た映像だ。

その右手の奥の方で男の子が後ろ向きに立っている。顔を横に向けて右目だけがこちらを睨んでいるように見えた。

みんな震えが止まらなかった。

この少年はビデオの中で生きているのだ。

きっと、こっちに振り返った時に、何か起こるんじゃないかな、と友人は言った。

それから、最後にビデオを貸したやつから返ってこなくなり、うやむやになってしまった。

もし、そのビデオテープが誰かの手元にあるとしたら、再生できないように処分して欲しい。

 

 

暗闇から見つめる視線

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