理科室の標本

理科室の人体模型が夜中になると動き出す――。

小学生や中学生のあいだで面白半分に語られる怪談の一種だ。

人の形をした人形などには「魂」が宿るとされている。これは古来の宗教から伝わる汎霊という考え方だ。

リアルな人体模型や標本は、人に異様な感情を抱かせる。

実は一昔前まで骨格標本は、本物の人骨を使ったものも珍しくなかったという。

実際に生きていた人間の骨が標本として理科室に置いてあるのだ。

だれも居ないはずの教室から音が聞こえてきたとしても不思議ではない。

夜間に校舎を見回っていた用務員の話などは全国にいくらでも存在する。

今では木材や人工の素材で作られるため、人骨の標本は少なくなった。

地方には古い校舎や教材がそのまま使われている場合もある。

もしかしたら、あなたの学校の人体模型は古い型番かもしれない。

興味があったら調べてみよう。ただし、明るい時間に。

暗闇から見つめる視線

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