10円玉

恐い、というよりも不思議な話です。

私が中学3年生のとき、昼休みに友だち2人と私の3人で「こっくりさん」でもやろうということになりました。

本当にノリで決めたんです。

「こっくりさん」の詳しいやり方は知りませんでした。友だちが詳しかったので言われるままにやっていました。

質問が一通り終わって、「こっくりさん」にもう帰ってもらおうとしたときです。

「こっくりさん、こっくりさん、どうぞお戻り下さい」

私は「はい」と書かれた手書きの文字に目を移しました。

帰ってくれませんでした。

何度か試してみましたが、やっぱりだめでした。

もう授業が始まってしまう時間になったので、そこでつい、手を離してしまいました。

紙は破って捨てて、10円玉はどうするって話し合いました。

友だちの一人に預けて、とりあえず授業を受けました。

私は少し気味が悪い感じがしましたが、その友だちが10円玉を投げて遊んでいるのを見て安心しました。

その子は「こっくりさん」に詳しい方の友人でした。

ただ、何度か放り投げているうちに、その10円玉を床に落としてしまったんです。

拾い上げてみると、その10円玉はありえない形に変形していました。

子供の力じゃ絶対に曲げられない形になっていました。手元に10円玉がある人は確かめてみてください。

恐くなって、私たちは教室の黒板の裏に10円玉を隠して、そのまま下校しました。

皆、卒業するまで頭のどこかで気になっていたと思います。

でも、その事を口にする子はいませんでした。

私はあるきっかけでそれを思い出したんです。

 

 

多分いまでも黒板の裏にあると思います。

 

 

暗闇から見つめる視線

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