今から行っていい?

これは知り合いのSから聞いた話です。

ある日の夜、携帯にメールが入った音で起こされたそうです。

誰からだろうと思って時計を見ると、朝の四時。

まだ外は暗く、こんな時間にメールしてくる人なんて自分の周りにはいないと思いながら、気になったのでメールを見たそうです。

 

 

「今から行っていい?」

 

 

メールの件名にはそう書いてありましたが、本文は空っぽだったそうです。

 

「なんだ、間違いかよ」

 

メールアドレスも見た事のないものだったので、Sはそのまま寝る事にしました。

 

次の日。

同じ時間にまたメールがあったそうです。

 

 

「今から行っていい?」

 

 

昨日と同じ内容でした。本文は空っぽです。

 

「ふざけんなよ!」

 

返信して間違いである事を教えようとしましたが、その時はなんとなく止めておこうと思ったそうです。

次来たら絶対文句を言ってやる!

Sはそう思ってベッドに戻りました。

 

次の日、朝いつも起きている時間に目が覚めて、Sはメールが来ていない事に気づきました。

 

「やっぱあれは間違いか」

 

そう思い、Sはメールの事を忘れる事にしました。

 

しかし、その日の夜。

 

Sは朝四時に起こされて不機嫌でした。

 

「マジかよ!」

 

ベッドから飛び起きて携帯を鷲掴みにすると、Sは今度こそ返信してやると思い、メール画面を開きました。

 

 

「今から行っていい?」

 

 

ん?

 

 

そのメールは本文こそ空っぽでしたが、画像が添付してありました。

そして、その画像を見たSは驚愕して動けなくなったと言います。

なぜならその画像は、自分が住んでいる家を外から撮った写真だったからです。

しかも、たった今写したかのような夜間の景色だったそうです。

Sは誰かの悪い悪戯かと思いました。

しかし、いい大人がここまでして何の得になるでしょうか。ストーキングされる心当たりも全くありません。

Sは、気味悪がりながらも、一旦忘れることにしました。

 

翌日。

今日もメールが来るんじゃないかとビクビクしながら、Sは帰宅しました。

しかし、その後一切メールは来なくなりました。

安心したSは、何気なくいじっていた携帯の中にとんでもない物を見つけてしまいます。

 

なんと、あのメールに添付されていた画像が、保存した記憶が無いにも関わらず、端末に残されていたのです。

気持悪くなったSは、即座に画像を削除しました。

 

しかし

 

次の日になると、また画像が復活していたそうです。

しかも、メールを受け取った時の景色よりも、自分の家に近づいているような気がしたと言います。

 

 

「今から行っていい?」

 

 

あのメールの意味は何なんだ?

Sは必死に考えました。

返信すべきだったのか?

いや……それで解決するとは限らない。

そもそも誰が? 何のために?

ついにSは、消しても消しても復活する画像が自分の玄関の前まで来たところで、携帯を破壊し、解約してしまいました。

 

一応、それ以降は奇怪な現象は起きていないそうです。

その一件以来、彼は精神的に通うようになり、携帯電話を使う事が出来なくなってしいました。

 

 

暗闇から見つめる視線

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