姦姦蛇螺(かんかんだら)
中学生の頃、俺は田舎者の世間知らずで、毎日友だちと馬鹿やって荒れた生活を送っていた。
特に仲良かったのがAとBだ。
俺とAは家族からまるっきり見放されていたのだが、Bだけは母親から可愛がられていて、いつも構ってもらっていた。
あくまでも厳しい態度ではあるが、何だかんだ言ってBのために色々と尽くしてくれていたようだ。
そんなBと母親が、ある日かなりキツい喧嘩をした。
詳しい内容は語らなかったものの、Bは母親を精神的に痛め付けたらしい。中学三年の時だ。
Bと母親が喧嘩をしている最中に、父親が帰ってきたそうだ。一目で状況を察した父親は、Bを無視して母親の元へ近づいた。
衣服や髪が乱れている上に、死んだ魚のような目で床に目を落としている母親を見て、父親が口を開いた。
「お前は、ここまで人を踏みにじれるような人間になっちまったんだな。母さんがどれだけお前を想ってるか、なんで分からないんだ」
Bの方を一切見ずに、父親は母を抱きしめたそうだ。
Bは反抗的な態度を取った。
「うるせえ! てめえぶっ飛ばしてやろうか? あ?」
最初に言ったが、俺たちは荒れていたんだ。
だがBの父親は何の反応も示さずに、淡々と話を続けたらしい。
「お前、自分には怖いものなんて何もないと、そう思っていないか」
「ねえよ。あるなら見せてもらいてえもんだな」
Bの父親は少し沈黙してから、話し始めた。
「お前は俺の息子だ。母さんがお前のことをどれだけ心配しているのかも良く知っている。だが、お前が母さんに対してこういう事しか出来ないのなら、俺にも考えがある。これは父としてではなく、一人の人間として話す。先にはっきり言っておくが、俺がこれを話すのは、お前が死んでも構わんと覚悟した証拠だ」
それでいいなら聞け、と言って父親はBの目を直視した。
その言動にBは何か凄まじい気迫のようなものを感じたらしい。だが、Bは引っ込みがつかなくなっていた。
「いいよ、話せよ」
「森の中で立入禁止になっている区域があるのを知ってるな。あの場所へ行って、中に入って奥へ進んでみろ。理由は、行けばわかる。そこで今みたいに暴れてみろ。お前に出来るものならな」
森というのは、俺たちが住んでいる地域の周辺に山があって、そのふもとに生い茂っている樹海みたいな場所だ。
山そのものは普通に入れる。森も一見普通ではあるが、中に入っていくと途中で立入禁止になってる区域がある。
それはちょうど、言ってみれば四角い面の中に小さい円を書いて、その中には入るな、という状態だった。
立入禁止区域は、二メートル近い高さの柵で囲まれている上に、柵には有刺鉄線と紙垂(しで)のような白い紙が絡まっていて、大小さまざまな鈴が無数にぶら下がっているため、近づきがたい印象があった。
しかも、原生林の部分的な区域を囲んでいるため、柵そのものの並び方もいびつで、とにかく尋常じゃない雰囲気を醸し出していた。
俺は特定の日に、巫女さんが森の入り口に集まっているのを見たことがある。その日は付近一帯に立入制限がかけられるため、何をしているのかは不明だった。
町の住人であれば様々な噂を耳にするが、宗教関係の施設があるというのが有力な説だ。そもそも、その地点まで行くのが面倒かつ不気味なので、奥まで行ったという話は聞いたことがない。
Bの父親は息子の返事を待たずに、母親を連れて二階へ上がって行った。Bはそのまま家を出て、待ち合わせをしていた俺とAと合流した。そこで俺たちもこの話を聞いた。
「お前の親父がそこまで言うなんて相当だな」とAが言った。
「噂じゃカルト教団のアジトだって話だぞ。捕まったら洗脳されちまうかもしれねえ。ビビってるわけじゃねえけど、行くのか?」
俺はBの意思を確認した。その態度を見れば結果は明らかだった。
「行くに決まってんだろ。どうせ親父のハッタリだよ」
俺とAも興味本位でついて行くことになり、その日のうちに三人でそこへ向かうことになった。
あれこれ道具を用意しているうちに、深夜一時を過ぎた。意気揚々と現場に参じた俺たちは、懐中電灯を取り出してさっそく森の中に踏み込んだ。
軽装でも進んで行けるような道だった。俺たちは地下足袋(じかたび)を選択したため歩きやすかったが、問題の地点に到達するには四十分近く歩かなければならない。
ところが、森へ入ってから五分もしないうちに、おかしな事が起きた。
俺たちが森の中を歩き始めたのとほぼ同じタイミングで、遠くから何かの音が聞こえてくるのだ。夜の静けさの中で、最初に気付いたのはBだった。
「おい、何か聞こえねぇか?」
Bは足を止めて首を左右に振る。Aも耳をすますように顔を持ち上げた。確かに俺の耳にも届いた。落ち葉の上で何かを引きずるような音。そして小枝を踏みしめる時に鳴るパキッ、パキッという音。それが遠くの方から、微かに聞こえてくるのだ。
距離が遠いということもあって、俺は恐怖を感じなかった。森の中なんだから動物くらい居るだろ、と言葉を交わして俺たちは先へ進んだ。
そのまま二十分ほどが経過した。さっきよりも森の奥へ進んだところで、Bがまた何かに気づいた様子だった。
「A、お前だけちょっと歩いてみてくれ」とBが言った。
「あ? 何でだよ」とAがBの方を見る。
「いいから早く!」
言われた通り、Aは不満げな表情を浮かべながら一人で前へ歩いていき、またこちらへ戻って来た。その様子を見て、Bは考え込むように下を向き腕を組んだ。
「おい、何なんだよ」とAが言った。
「説明しろよ」
俺ったちが詰め寄ると、Bは「静かにして、よく聞いててみろ」と言ったきり、Aにさせたように一人で前へ歩いていき、またこちらへ戻って来た。
それを二度、三度と繰り返しているうちに、ようやく俺たちは気づいた。
遠くの方から微かに聞こえてくる音は、俺たちの動きに合わせているようだった。俺たちが歩くとその分音も動き、俺たちが立ち止まると音も止まる。まるでこちらの様子を伺っているようで気味が悪くなってきた。
俺は急に背筋に冷たいものを感じた。
周囲には俺たちの持っている懐中電灯以外に光を発するものはない。月は出ているが、樹冠に遮られているため、それほど光は届かない。
相手から見れば懐中電灯を点けて闇を歩いている俺たちの位置は、丸わかりというわけだ。しかし俺たちの方から光を視認できないのは、どういうわけか。
暗闇の森で光もなしに歩いて、一体何をしているんだ?
「ふざけんなよ。誰かが俺たちを尾行してんのかもしれねえ」
Bが声のトーンを落として警戒を強めた。
「近づかれてる気配はないよな。さっきから向こうはずっと同じくらいの距離感だし」
Aが言った。
森に入ってからここまでの間に、その音と俺たちの距離は一定だった。思い返してみれば、近づいてくるわけでも遠ざかるわけでもなく、終始、同じ距離を保っていたような気がした。
「まさか監視されてんのかな?」俺は二人の顔を見た。
「そんな感じだよな。カルト教団とかなら何か変な装置とか持ってそうだしよ」
Aが冗談を言っているようには思えない真剣な面持ちで見返してきた。
音から察すると、複数ではなく一人がずっと俺たちにくっついてるような感じがした。俺たちはしばらく足を止めて考え、下手に正体を探ろうとするのは危険と判断し、一応あたりを警戒しながら進むことに決めた。
それからずっと音につきまとわれながら進んだ。ようやく柵が見えてきたので、音の存在が意識から消えた。そんな些細なことよりも、目の前にそびえる柵の様子の方が不気味だったからだ。
全員その柵を見るのは初めてだった。想像以上のものだった。それと同時に、これまで考えもしなかった事が頭をよぎる。
普段は心霊のことなど馬鹿にして信じない。そんな俺たちから見ても、目の前にある現実は「そういう類のもの」を示唆しているとしか言いようがなかった。
半端じゃなくやばい雰囲気を感じた。まさか霊的な意味で〝曰く付き〟の場所なのか。俺は森へ踏み込んでから初めて、本当にやばい場所に来てしまったんじゃないかと思い始めた。
「おい、これぶち破って奥行けってのか? 誰が見ても普通じゃねえだろ、これ」
Aが背丈よりも高い柵を見上げた。
「うるせえな、こんなんでビビってんじゃねえよ!」
Bは勝ち気な様子で俺とAを野次り、持参してきた道具で柵を壊し始めた。
有刺鉄線と紙垂(しで)のような白い紙が大量に巻き付いた柵が揺れ、無数にくくりつけられた鈴の音が響いた。
だが、Bが思っていたよりも柵は頑丈だったらしく、一般人が使うような道具では歯が立たなかった。俺たちも手伝ったが、特殊な素材でも使っているのかと思うくらい、柵はびくともしなかった。
結局、俺たちは柵をよじ登るしか手段がなくなった。しかし柵の表面には金網が張り巡らせてあったので、なんとかそれを掴んで登ることができた。
柵を越えた途端、急に違和感に襲われた。閉塞感のような、檻に閉じ込められた囚人ような息苦しさだ。AとBも同じような感覚を抱いたらしく、足を踏み出すのを躊躇していた。
低く身構えて三人で顔を見合わせる。柵を越えてしまったからには行くしかない。
足を踏み出してから数歩進んだところで、俺は気づいた。ずっとつきまとっていたあの音が、柵を越えてからぱったり聞こえなくなっているのだ。正直、そんなことはどうでもいいと思えるほど嫌な空気が満ちていた。そしてAが放った言葉でさらに嫌悪感が増した。
「もしかしてさぁ……あいつ、ずっとここにいたんじゃねえの? ここから見える分だけでもあの柵に出入口みたいなものはないしさ。それで俺たちに近づけなかったんじゃ……」
「んなわけねえだろ。俺たちが音の動きに気づいた場所ですら、ここからじゃもう見えねえんだぞ? それなのに森に入った時点で俺たちの様子が分かるわけねえだろ」
普通に考えればBの推察が正しかった。森の入り口と禁止区域はかなり離れている。時間にして四十分ほどと言ったが、俺たちだってちんたら歩いていたわけではないし、中学生とは言え普通の速度で進んでいたはずだ。
しかし、この時すでに「そういう類のもの」の存在を意識してしまっていた俺は、Aの言葉も否定できない状態だった。柵を見た時の反応で全員ヤバいと感じているのは確かだ。
それでもBだけは俄然強気だった。
「霊だか何だか知らねえけどよ、お前の言うとおりだとしたら、そいつはこの柵から出られねえって事だろ? だったら、そんなやつ大したことねえよ」
柵を越えてから二、三十分歩き、うっすらと反対側の柵が見え始めたところで、不思議なものを発見した。
特定の六本の木に注連縄(しめなわ)が巻かれ、その六本の木を縄で括り、六角形の境界がつくられていた。
そして柵にかかってるのとは別格の、正式な紙垂(しで)も飾られていた。
その中央に賽銭箱のような箱が、ぽつんと置かれていた。
目にした瞬間、俺たちは三人とも言葉を失った。特に俺とAは、本当にまずい領域に来てしまったと身震いを起こした。
どんなに馬鹿な俺たちでも、しめ縄がどのような場所で何のために用いられるのかぐらい、何となく知っている。そういった意味でも、ここを柵で囲って立入禁止にしているのには、重大な意味があるに違いないと感じた。
目の前の光景がそれを表している。俺たちは、とうとう来るとこまで来てしまったわけだ。
「お前の親父が言ってたのって、多分これの事だろ」
Bに俺は問いかける。
「暴れるとか無理じゃね。明らかにやばいだろ」とAが言った。
だが、Bは強気な姿勢を崩さなかった。
「別に悪いもんとは限らねえだろ。とりあえずあの箱なんなのか見て見ようぜ! お宝でも入ってるかもな」
Bは樹の間にかけられた縄をくぐって六角形の領域に入り込んだ。そのままずかずかと歩いて箱に近づく。俺は箱のことよりもBが何かをしでかすんじゃないかと思って不安だった。とりあえずBに続いて縄の内側に入る。
箱は野ざらしの状態で風雨にやられて土と錆だらけだった。上部の蓋には網が張られていた。しかし蓋の内側にまた板が敷かれていて、結局中を見ることはできなかった。
そして箱の外側にはチョークか何かで模様が描かれていた。恐らく家紋のような印だ。前後左右の面に、それぞれいくつもの紋章みたいな図形が描き込まれていた。しかも全部違う模様で、同じものは見当たらない。
俺は周囲の物にできるだけ触れないようにした。Bにも不用意に扱うなと注意しながら、三人で箱を調べた。
どうやら地面に箱底を直接固定しているらしく、重くはないはずなのに持ち上がらなかった。中身をどうやって見るのかと隅々までチェックすると、後ろの面だけ外れるように仕掛けが施されていた。
「おい、ここだけ外れるぞ! 見てみようぜ」
Bが箱の一面を取り外し、背面から箱の中を覗き込む。俺とAもBの肩越しに目を凝らす。
箱の中には四隅にペットボトルのような形の壺が置かれていた。そして箱の中央に、先端が赤く塗られた五センチほどの木片が、奇妙な形で置かれていた。
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このような形で木片が六本、隣接する四ヶ所だけが赤く塗られ、置かれている。
「なんだこれ、爪楊枝か?」
俺は思ったことを口に出した。
「おい、ペットボトルみてえなやつの中に何か入ってるぞ。気持ちわりいな」
Aが箱から顔を背ける。
「ここまで来てペットボトルと爪楊枝かよ。意味わかんねえな」
Bは不満そうだった。俺とAはぺットボトルのような壺を少し触ってみる程度に留めたが、Bはそれを手に取って臭いを嗅いだり角度を変えて眺め回したりした。
Bは壺を元の位置に戻すと、今度は爪楊枝の方に手を伸ばした。
ところが、汗をかいていた指が一瞬木片にくっつき、離した弾みで形が崩れてしまった。
その瞬間。
チリンチリン! チリンチリン!
俺たちが来た方角とは反対側の、六角形の外側にうっすらと見えていた柵の方から、物凄い勢いで鳴る鈴の音が聞こえた。
俺はぎょっとして身を硬直させた。他の二人も、わっと声を上げて同時に姿勢を変えた。
「ちくしょう誰だ! ふざけんなよ!」
Bは喚き散らして、音の方に駆け出す。
「おい馬鹿! そっちに行くな」
俺は手を伸ばしてBを引き留めようとした。
Aが狼狽えた声で、やばいって、と叫ぶ。
俺がBを追いかけて肩を押さえようとすると、Bは突然その場で立ち止まり、懐中電灯を前方に向けたまま動かなくなった。
「何だよ、フリかよ」
Aが自分を落ち着かせようと冗談めいたふりをして、後を追ってくる。しかしBの体は小刻みに震えていた。
おい、どうした――そう言いながら無意識に前方の照らされた部分を見る。
Bの懐中電灯は、立ち並ぶ木々のうちの一本、その根元のあたりを照らしていた。
その陰から、女の顔がこちらを伺っている。
顔を半分だけ出して、逆光を眩しがる様子もなく俺たちを見つめている。
上下の歯をむき出しにするように「いぃぃ〜っ」と口を開けている。そして目は据わっていた。
「うわぁぁぁぁぁっ!」
誰の悲鳴か分からないほど混じり合った。俺たちは一斉に踵を返して走り出した。
思考は真っ白で体が勝手に動いた。最善の行動をとったというよりも生存本能に従った結果だった。互いの反応を確認する余裕もなく、それぞれが独自の判断で柵へ向かった。
俺たちが乗り越えてきた柵にしがみついて無我夢中で登る。最上部に来たところで構わず一気に飛び降りる。
俺は即座に森の入り口の方へ駆け出そうとした。しかし、Aが手間取ってなかなか柵を登れない。
「A早くしろ!」俺は叫んだ。
Aは混乱していて、顔面蒼白だった。
「おい! 早くしろよ!」Bが言った。
Aを待ちながら、俺は柵の向こう側を警戒する。
「何だよあれ……何なんだよ」
「知らねえよ、黙れ!」
Bが苛立ちを隠さずに怒鳴った。俺たちは完全にパニック状態だった。
その時
チリンチリン! チリンチリン!
凄まじい大音量で鈴の音が鳴り響き、柵が揺れだした。
「何だ? どこからだ?」
俺は今までにない恐怖を感じながら左右を見回した。
森の入り口とは逆の山のある方角から聞こえていた鈴の音が、だんだんと近づき、柵を揺らしながら俺たちの方へ向かって来る。
「やばいぞ! おいやばいぞ!」
俺は考えもなしにとりあえず声を発した。Bが柵を相手に手こずっているAを叱咤する。
「まだかよ! 早くしろ!」
それが余計にAを混乱させることなど分かってはいるが、焦る気持ちで正常な判断など期待する方が難しい。
Aが必死の形相で柵をよじ登る。何度か足を滑らせ、歯を食いしばり、金網を掴んだ手を離し、最上部に手をかける。
Aがようやく上りきろうとしたその時、俺とBは視線を別の方向に移した。
体中から汗が噴き出し、声を出せなくなった。
それに気づいたAも、柵の上で身を固めたように見えた。
山の方までずらずらと続く柵の先に〝そいつ〟が張りついていた。しかも外側だ。俺たちが立っている方だ。
顔だけかと思ったそれは、裸で上半身のみの姿をしており、右腕と左腕が左右から三本ずつ伸びていた。
その腕で器用に綱と有刺鉄線を掴んで「いぃぃ〜っ」と口を開けたまま、巣を渡る蜘蛛のごとく、こちらへ這い寄って来た。
とてつもない恐怖を感じた。得体の知れない禍々しい異形だった。
「うわぁぁぁぁっ!」
Aがとっさに柵の上から飛び降りて、俺とBの横に倒れこんできた。その衝撃ではっ我に返った俺たちは、すぐにAの身を起こして森の入口へと向かって走り出した。
背後は振り返れない。前だけを見据えて必死に走った。
全力で走れば三十分もかからないはずの道のりを、何時間もかけて走ったような気がした。
森の切れ端が見えてくると、なぜか人影のようなものが見えた。おいまさか、と思って俺たちは急停止し、息を呑んで木陰に身を隠した。
誰だかわからないが数人の影が見える。
俺たちは、〝あいつ〟ではないことを確認し、再び走りだして人影の中に飛び込んだ。
「おい! 出てきたぞ!」
大人の声が聞こえた。
「まさか、本当にあの柵の先に行ったのか」
「おーい! 急いで奥さんに知らせろ!」
集まっていた人たちがざわめいて俺たちを迎えた。何を話しかけられたのか、すぐには分からないほど、頭が真っ白になり放心状態だった。
そのまま俺たちは車に乗せられて、午前三時を回っていたにも関わらず、行事の時などに使われる集会所へ連れていかれた。
中に入ると、俺のお袋と姉貴が来ていた。そしてAには父親が、Bには母親が迎えに来ていた。
Bの母親はともかく、最近ろくに会話をしていなかったうちのお袋まで泣いていた。Aもこの時、父親と顔を合わせて気まずそうにしていた。
「みんな無事だったんだね。よかったよ」Bの母親の声が漏れ聞こえる。
俺はお袋にしばかれた。Aも父親に殴られていた。だが、その後で今までに聞いた事もない暖かい言葉をかけられた。
しばらくすると、Bの母親が全員の前で頭を下げた。
「ごめんなさい。今回の事はうちの主人、ひいては私の責任です。本当に申し訳ありませんでした。本当に……」
Bの母親は何度も何度も頭を下げた。他人の家とはいえ、子供の前で親がそんな姿を晒しているのは、やはり嫌な気分だった。
「もういいでしょう。奥さん。こうしてみんな無事だったんだから」
Aの父親が言った。
「そうよ。あなたのせいじゃないんだから」
お袋が言った。
その後、ほとんど親同士で話が進められることとなり、俺たちは蚊帳の外の扱いになった。
時間も時間だったので、無事を確認し終えると早めに解散となった。この時は何の説明も受けないまま帰された。
一夜明けた次の日の昼ごろ、俺は姉貴に叩き起こされる形で目を覚ました。寝ぼけた状態で姉貴の顔を見ると、昨夜の続きかと思うくらい表情が強ばっていた。
「なんだよ」
不機嫌な声で俺が言うと、姉貴は低い声でこう告げた。
「Bのお母さんから電話。やばい事になってるよ」
受話器を受け取って電話に出ると、物凄い剣幕の叫びが聞こえた。
「Bが! Bがおかしいのよ! 昨夜あそこで何したの!? 柵の中に入っただけじゃないの?」
とても口を挟める状態ではなかった。俺はいったん家へ向かうと伝えて電話を切った。
同じように電話を受けたらしく、AもBの家に来ていた。そして二人でBの母親から話を聞く運びとなった。
昨夜の出来事の後、Bは家に戻ってから急に両手両足が痛いと言いだしたそうだ。痛みからくる苦痛で喚き散らし、両手両足をぴんと伸ばした状態で倒れ、床の上でのたうちまわったらしい。
Bの母親は対応を試みたそうだが、叫ぶばかりの息子を見て、意味が分からずどうにもできなかったそうだ。なんとか部屋まで運び入れたまでは良かったが、ずっと息子がおかしいままなので、俺たちの様子はどうなのかと確かめたかったらしい。
話を聞いてすぐにBの部屋へ向かった。階段を上がる途中もBの叫び声が聞こえた。
「いてぇ! いてぇよぉ!」
壁の向こうから、何度も何度も同じ言葉が聞こえる。
部屋の前に立ってドアを開けると、やはり手足をぴんと伸ばした状態で苦痛の叫びを上げるBの姿が見えた。
「おい! どうしたんだ!」
俺はBの傍らに近寄って聞いた。Aも俺の横で片膝をつく。
「しっかりしろ! どうしたんだよ!」
その呼び声が聞こえない様子で、Bは視線を中空に泳がせたまま叫んでいる。
どうなっているのか、さっぱり分からなかった。俺とAは無言で顔を見合わせて、いちどBの母親のいる一階へ戻ることにした。
「あそこで何をしたのか話してちょうだい。それで全部分かるはず。昨日あそこで何をしたの?」
さっきとはうってかわって冷静な口調だった。
何を知りたがっているのかは、もちろんわかっていたが、答えるためにまた〝あれ〟を思い出すのが本当に嫌だった。
俺は具体的なイメージを避けるために、曖昧な供述に終始し、何をしたのかという具体的な部分をすっかり抜かして喋ってしまった。
「何を見たか」は重要ではない。「何をしたか」を話してくれ、とBの母親に指摘された。
俺は何とか昨夜の事を思い出そうとした。Aも同じ気持ちだったはずだ。
何を見たかという点で言えば、Bも俺たちも同じ体験をしたはずだ。何をしたかという点でも、俺やAとBの行動に大きな違いはあっただろうか。箱の中は俺たちも見たし、ペットボトルのような壺にも触った。
残る要素と言えば……
……楊枝……
俺とAは同時に顔を上げた。
あの木片だ。あれにはBだけしか触ってないし、形も崩してしまっている。そして元に戻していない。
俺たちは、そのことをBの母親に伝えた。すると落ち着いていた表情がみるみる変わり、ぶるぶると震えだした。そしてすぐさま棚の引き出しから何かの紙を取り出し、それを見ながらどこかに電話をかけた。俺とAは、その行動を見守るしかなかった。
しばらく通話が続いて電話を切ると、俺たちの前に戻ってきたBの母親は震える声で言った。
「あちらに伺う形ならすぐにお会いしてくださるそうだから、今すぐ帰って用意しておいてちょうだい。あなたたちのご両親には私から話しておくから。何も言わなくても準備してくれると思う。それで明後日、またうちに来てちょうだい」
意味が分からなかった。誰に会いに行くというのだろう。どこへ行くのか、と聞いても説明をはぐらかされた。
すぐに帰宅を迫られたため、一応二人とも真っすぐ家に帰った。すると家に着くなりお袋から何の前置きもなく「必ず行ってきなさい」とだけ言われた。
二日後はあっという間に来た。俺とAはBの母親に連れられて、ある場所へと向かった。
Bは先に届けたらしい。ちょっと遠いのかな、くらいに思っていたが、町どころか県さえも違う場所だった。
新幹線に乗り込み数時間かけて移動し、駅から降りると車で山道を走り、絵に書いたような山奥の村まで連れていかれた。
村の外れにある人気のない場所に、ある屋敷が建っていた。俺たちはそこに案内された。
大きな造りの古い屋敷で、離れや蔵まであり、とても立派なものだった。
Bの母親が呼び鈴を鳴らすと、ガラの悪い男性と女の人が出迎えた。
男の容姿は、いかにも〝筋モノ〟の印象で、山奥の村なのにスーツを着ていて怪しかった。
女の人は、俺よりも少し年上ぐらいで、白装束に赤い袴と、いわゆる巫女さんの格好をしていた。
その男は、どうやら巫女さんの伯父らしく、普通によくある名字を名乗ったのだが、巫女さんの方は「あおいかんじょ(俺にはこう聞こえた。以後、葵とする)」と、よくわからない名を名乗った。
名前を教えるといっても、一般的な認識とは全く違うものらしく、よく分からないのだが、要するに彼女の家の素性は一切知る事が出来ないのだそうだ。
俺たちは何も知らされないまま、だだっ広い座敷に案内された。そこで右も左も分からないまま話を聞くことになった。
「息子さんは今安静にさせてますわ。この子らが一緒にいた子ですか?」
怪しげな伯父さんが言った。生意気な俺たちでも萎縮する風貌だった。
「はい。その三人であの場所へ行ったようなんです」とBの母親が答えた。
「そうですか。君ら、ワシらに話してもらえるか? どこに行って、何をし、何を見たか。出来るだけ詳しくな」
俺とAは出来るだけ詳しくあの夜の出来事を話した。日数が経っていたため、二人で補完し合いながら詳細を伝える。
ところが、楊枝のくだりに差し掛かった所で突然伯父さんが怒鳴った。
「おいコラ、今何つった?」
といきなりドスの効いた声が座敷に響いたため、俺たちはますます肩を縮めた。
「は、はい?」
Aが挙動不審になりながら伯父さんに聞き返す。
「おめぇら、まさかあれを動かしたんじゃねえだろうな!?」
身を乗り出して今にも掴み掛かってきそうな勢いだった。
すると巫女姿の葵がそれを制して、蚊の泣くようなか細い声で話し始めた。
「箱の中央に、小さな棒のようなものが、ある形を表すように置かれていたはずです。それに触れましたか? 触れた事によって、少しでも形を変えてしまいましたか?」
俺はドスの効いた声を避けたくて葵の方に向き直った。
「はい、あの、動かして、しまいました。形もずれちゃったと思います」
「形を変えてしまったのはどなたか、覚えてらっしゃいますか? 触ったかどうかではありません。形を変えたかどうかです」
俺はAと顔を見合わせ、Bだと告げた。
すると、伯父さんの方が身を引き、息をついてBの母親を見た。
「お母さん、残念ですがね、息子さんはもうどうにもならんでしょう。ワシは詳しく聞いてなかったが、あの症状なら他の原因も考えられる。まさかあれを動かしたとは思わなかったんでね」
「そんな……」
Bの母親は言葉をつなごうとしてから、息を飲み込んで俯いた。
口には出せなかったが、俺も同じ気持ちだった。「もうどうにもならん」という言葉が耳に張り付いていた。一体何の話をしているのだろうか。そう問いたくても、声に出せない。
俺たちの様子を見て、伯父さんはため息混じりに話しだした。
ここでようやく、俺たちが見たものの話がされる。
古くは「姦姦蛇螺」「姦姦唾螺」
俗称は「生離蛇螺」「生離唾螺」
「かんかんだら」「かんかんじゃら」「なりだら」「なりじゃら」など、知っている人の年代や家柄によって呼び方はいろいろあるらしい。
現在一番多い呼び方は単に「だら」、伯父さんたちのように特殊な家柄では「かんかんだら」の呼び方が使われているそうだ。
もはや神話か伝説に近い話だ。
人を食らう大蛇に悩まされていたある村の村人たちは、神の子として様々な力を代々受け継いでいた巫女の家系に退治を依頼した。依頼を受けたその家は、特に力の強かった一人の巫女を大蛇討伐に向かわせる。
村人たちが陰から見守る中、巫女は大蛇を退治すべく懸命に立ち向かった。しかし、わずかな隙を突かれて、大蛇に下半身を食われてしまったそうだ。それでも巫女は村人を守ろうと様々な術を使い、必死で立ち向かった。
ところが、下半身を失っては勝ち目がないと決め込んだ村人たちは、あろう事か巫女を生け贄にする代わりに村の安全を保障してほしいと大蛇に持ちかけた。
強い力を持つ巫女を疎ましく思っていた大蛇は、それを承諾し、食べやすいようにと村人たちに腕を切り落とさせて、達磨状態の巫女を食らったという。
村人たちは一時の平穏を得た。
後に、これ自体が巫女の家系の一部の者による計略だった事が明かされる。この時の巫女の家族は六人。異変はすぐに起きた。
大蛇がある日から姿を見せなくなり、襲うものがいなくなったはずの村で次々と人が死んでいった。
村の中で、山の中で、森の中で。
死んだ者はみな、右腕、左腕のどちらかが失われていた。
十八人が死亡する事態となり、巫女の家族六人も含まれていた。
生き残った村人は四人だった。
「これが、いつの時代からどこで伝わっていたのかは記録されていないが、あの箱は一定の周期で場所を移して供養されてきたものだ。その時々によって管理者は違う。箱に家紋みたいなものがあったろう? ありゃ今まで供養の場所を提供してきた家の印だ。ウチみたいな家柄の者で、それを審査する集まりがあってな、そこで決められる。まれに自ら志願してくる馬鹿もいるがな」
伯父さんは更に続けた。
「管理者以外にゃ〈かんかんだら〉に関する話は一切知らされない。付近の住民には、管理者から曰く付きだという事と万が一の時の相談先だけが告げられる。伝える際には相談役、つまりワシらみたいな家柄のもんが立ち合うから、それだけで〝曰く〟の意味を理解するわけだ。今の相談役はウチじゃねえが、緊急事案って事で昨日うちに連絡が回ってきた」
そうか。一昨日Bの母親が電話していたのは別の人物なのだ。相談を受けた先方は、まずBを連れてこの家を尋ね、話し合った結果ここの人たちに任せたのだろう。Bの母親は俺たちが知らないうちに、そこと連絡を取って、ある程度の詳細を聞かされていたようだ。
続いて葵が口を開いた。
「基本的に箱は山もしくは森に移されます。ご覧になられたかと思いますが、六本の木と六本の縄は村人を、六本の棒は巫女の家族を、四隅に置かれた壺は生き残られた四人を表しています。そして、六本の棒が成している形こそが、巫女を表しているのです」
静かで淀みのない説明だった。
「なぜこのような形式がとられるようになったのか、箱自体に関しても、いつからあのようなものだったのか、私の家を含めて現世代では伝わっている以上の詳細を知る者はいないでしょう」
そんな中で有力な説は、生き残った四人が巫女の家で怨念を鎮めるためにありとあらゆる事柄を調べ、その結果生まれた独自の形式ではないか――というものらしい。
柵に関しては鈴だけが形式に従ったもので、金網などは後世の管理者によるものだったらしい。
「ウチの者で〈かんかんだら〉を祓ったのは過去に何人かいるそうだがな、全員が二、三年のあいだに死んでるんだ。それもある日、突然な。事を起こした当事者もほとんど助からない。それだけ難しいってことなんだよ」
ここまで話を聞かされておいて何だが、俺は内容の半分も理解できていなかった。
ここで事態は一変する。
「お母さん、どれだけ強力なものかは何となく分かってもらえましたか。さっきも言いましたが、棒を動かしてさえいなければ何とかなったんです。でも今回はだめでしょうな」
伯父さんはあっさりと言い切った。
「お願いします。何とかしてやれないでしょうか。私の責任なんです。どうかお願いします」
Bの母親は何度も頭を下げた。一片たりとも母親のせいだとは思えないのに、自分の責任にしてまで頭を下げ、必死で頼み続けている。しかし泣きながらとかではなく、何かを覚悟したような顔つきだった。
「何とかしてやりたいのはワシらも同じです。しかし何度も言いますが、棒を動かしたうえであれを見ちまったんなら――お前らも見たんだろ? お前らが見たのが大蛇に食われたっつう巫女だよ。下半身も見たはずだ。それであの形の意味が分かったはずだ」
「えっ?」
俺は嫌な記憶を思い起こし、暗闇に蠢く異形の姿を観察した。俺が見たのは、確か上半身だけのはずだ。
「あの、下半身っていうのは……上半身なら見ましたけど」
Aが自信なさげに言うと、伯父さんが大げさに驚き、葵もはっと目を開いた。
「おいおいおいおい何言ってんだ? お前ら、あの棒を動かしたんだろ? だったら下半身も見てるはずだぜ」
「あなた方の前に姿を見せた彼女は、どのような容姿でしたか? 下半身は? 腕は? 何本でしたか?」
俺は記憶にある通りの特徴を説明した。
「腕は六本でした。左右に三本ずつです。でも下半身は、ありませんでした」
俺はAに途中で確認を取り、上半身しか見なかったことを強調した。
すると伯父さんが再び前のめりになって、俺たちを尋問するように睨みつけた。
「おい間違いねえのか? ほんとうに下半身を見てねえんだな?」
「は、はい」
俺は首を縦に小刻みに振った。
伯父さんはBの母親に向き直り、満面の笑みを浮かべた。
「お母さん、何とかなるかもしれん」
Bの母親は安堵していいものか分からない様子で、ただ息を詰めて顎を引く。
俺はとにかく話の行き着く先が知りたくて黙っていた。
「巫女の怨念を浴びてしまう行動は二つです。やってはならないのは、巫女を表すあの形を変えてしまうこと。そして見てはならないのは、その形が表している巫女の姿です」
葵が淡々とした口調で言った。
「実際には棒を動かした時点で終わりだ。必然的に巫女の姿を見ちまうんだからな。だが、どういうわけかお前らはそれを見てない。動かした本人以外も、その場にいれば同じ姿を見るはずだから、お前らが見てないのなら、あの子も見ていないだろう」
「見てないっていうのは、どういう意味なんですか?」俺が聞くと葵がこくりと頷いた。
「巫女本人である事には変わりありません。ですが〈かんかんだら〉ではないのです。あなた方の命を奪う意志がなかったのでしょう。〈かんかんだら〉ではなく巫女として現われた。その夜の事は彼女にとって、お遊戯だったのです」
巫女と〈かんかんだら〉は同一の存在であり、同時に別々の存在でもある、と葵は言った。
「〈かんかんだら〉が出てきてないのなら、今あの子を襲っているのは葵が言うようにお遊び程度のものなんだろうな。ワシらに任せてもらえれば、長期間にはなるが何とかしてやれるだろう」
緊迫していた空気が初めて和らいだ。Bが助かる見込みがあるだけで救われた気になった。この時のBの母親の表情の移り変わりようと言ったら言葉に表せない。この数日間、どれだけ息子のことを心配していたのか、よく分かった。
その反応を見た伯父さんと葵も表情を和らげた。急に普通の人みたいに見えた。
「あの子は正式にワシらが引き受けますわ。お母さんには後で説明させてもらいます。お前ら二人は、念のため葵に祓ってもらってから帰れ。今後は怖いもの知らずも、ほどほどにしとけよ」
そしてBに関する話を少し交わしてから、俺たちは別室へ移動し、お祓いをしてもらった。
この家系の決まりでBには会わせてもらえずに、どんな処置を施すのかも教えてもらえなかった。俺たちはBの母親とも会わずに、そのまま送迎の車に乗せられて、二人だけで地元に帰ってきたわけだ。
学校生活に戻ってからも、Bの姿を見ることはなかった。転校扱いになったのか、在籍していたのかすら分からないまま、卒業を迎えた。人づてに、すっかり更正して今はちゃんとどこかで生活している、という話だけを聞かされた。
結局、Bの父親は一連の騒動に一度も顔を出さなかった。
俺とAも、その後すぐに落ち着くことができた。理由はいろいろとあったが、一番大きかったのは、やはりBの母親だった。どんな気持ちで親が子を見ているのか、考えさせられるところがあった。その一件以来、俺もAも、親に対する接し方が変わった。
他に分かった事がある。特定の日に集まっていた巫女さんは、相談役になった家系の者である、ということだ。
〈かんかんだら〉は、危険な存在として認識されていながら、ある種の神に似た扱いを受けていたということ。それは元々、大蛇が山や森の神だったことによるものだそうだ。それで年に一回、あの場所で神楽を舞ったり祝詞を奏上したりして供養するそうなのだ。
ちなみに、俺たちが森に入ってから音が聞こえたのは、〈かんかんだら〉が柵の中で放し飼いのような状態になっているかららしい。六角形の結界と箱の中の爪楊枝が封印の役割となり、棒の形や結界を崩したりしない限り、姿を見せる事はないそうだ。
供養場所は何らかの法則によって、山や森の中の限定された一部分に指定されるらしく、入念に細かい数字まで出して範囲を決めるそうだ。基本的にその区域から〈かんかんだら〉は出られないらしいが、柵などで囲んでる場合は、俺たちが見たように外側に張りついて迫ってくる事もあるようだ。
俺の地元からは、既に例の場所は移転したらしい。たぶん今は別の場所にあるんだろうな。