異界の鏡

小学校の階段の二階から三階に上がる踊り場のところに大きな鏡が掛けてあった。

その鏡はいわくつきの鏡で、夜中に鏡の前を通ると、鏡を通して向こう側の世界が見える、という話を聞いた。

その昔、一人の女子生徒が夜の学校に忍び込み、探検を行っている最中に行方が分からなくなり、次の日になっても帰って来なかったそうだ。

翌日、女子生徒を探すために捜査が行われ、例の鏡の前に上履きが置かれているのを発見したそうだ。

そのため、女子生徒は鏡の中に入り込んでしまったのだ、という噂が流れた。

その鏡は、もしかしたら帰ってくるかもしれないという親族の頼みによって、撤去されずに残されたそうだ。

私が卒業するまではまだ残っていたけど、今もそこにあるのかは分からない。

 

 

暗闇から見つめる視線

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